法然院サンガ: 331

法然院サンガからのご案内

N-0331-J

2020年 5月 1日更新

法然院サンガ

法然院サンガからの御案内
並びに 
「法然院災害対策基金」へ御寄付のお願い

南無阿弥陀佛。

 境内では藤・石楠花(しゃくなげ)・牡丹(ぼたん)・躑躅(つつじ)・大手毬(おおでまり)・などが咲き揃い、新緑が日々鮮やかになってまいりました。

 新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定に基づき、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態措置を実施すべき区域が4月16日に全国に広げられて以降も東京都、大阪府を中心に感染の拡大が続いています。京都市では全市立学校・幼稚園の休業期間が5月17日(日)まで延長され、京都府立高校の休業期間も5月31日(日)まで延長されました。医療従事者の皆様方の現場での獅子奮迅のご尽力には普段にも増して深い敬意と感謝の抱き、他界された方々には心から哀悼の意を表し、念佛を唱えます。4月25日には京都市上京区の堀川病院から「ポリ袋による手づくりガウン(腕・エプロン)作成にご協力下さい」との呼びかけが発せられ、マスクと共に防護具が足りていない医療現場の逼迫した状況も明らかになりました。皆様方も先の見通しの立たない不自由な暮らしを強いられ、不安な日々をお過ごしのことと心よりお見舞いを申し上げます。

 私が現状の認識とこれからの生き方を考える上で参考にさせていただいたのは『感染症の世界史』(角川ソフィア文庫)の著者、石 弘之さん(朝日新聞編集委員、東京大学・北海道大学大学院教授を歴任)へのインタビュー「新型コロナウイルスは なぜ発生したのか? いつ収まるのか?」(2月20日)と「新型コロナウイルスがパンデミックに 東京五輪は開催できるのか? 経済への影響は?」(3月13日)です。 web上で読むことができますので、ご一読をお薦めいたします。

 『動的平衡』で著名な福岡伸一さんは「ウイルスの運動はときに宿主に病気をもたらし、死をもたらすこともありうる。しかし、それにもまして遺伝情報の水平移動は生命系全体の利他的なツールとして、情報の交換と包摂に役立っていった」と記され、ウイルスの存在こそが生命の進化を加速させてきたと説かれます。新型コロナウイルスの感染拡大の原因は地球規模の人や物の動きが加速したことにあります。言わば人類の共業共得(ぐうごうぐうとく)です。医療従事者の皆様方の現場でのご努力にはウイルスとの闘いという表現が相応しいのかと思いますが、私はウイルスとの闘いではなく、ウイルスと如何に付き合ってゆくか、如何に共存してゆくのかという気持ちで、あと2〜3年続くかもしれない新型コロナウイルスとの御縁に向き合ってゆこうと存じております。

 また岩波新書編集部「B面の岩波新書」というウェブサイトに掲載されている藤原辰史さん(京都大学人文科学研究所准教授)の『パンデミックを生きる指針〜歴史研究のアプローチ〜』を拝読し、以下の文章が特に心に刻まれました。

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「世界史の住人たちは一度として、危機の反省から、危機を繰り返さないための未来への指針を生み出したことがない。世界史で流された血の染み付いたバトンを握る私たちは、今回こそは今後使いものになる指針めいたことを探ることはできないだろうか。第一に、うがい、手洗い、歯磨き、洗顔、換気、入浴、食事、清掃、睡眠という日常の習慣を、誰もが誰からも奪ってはならないこと。あたりまえだ、という反応が帰ってきそうだが、歴史が我々に教えているのはむしろ、戦争とそのための船上および鉄道での移動がこのあたりまえの習慣を困難にしたことである。人間を不衛生な場所に収容・監禁することがこれを困難にしてきた歴史も、私たちは知っている。仕事が忙しくても、仕事中に上記の基本的な予防(たとえば昼休みにも歯磨きをすることや共有のゴミ箱やトイレを丁寧に使うこと)を部下が実践することを、上司が止めず、上司もみずから進んでやること。よく食べ、よく笑い、よく寝る、という免疫力をつける重要な行為が、これまで仕事よりもあまり重視されなかったことを反省してみてもよい。第二に、組織内、家庭内での暴力や理不尽な命令に対し、組織や家庭から逃れたり異議申し立てをしたりすることをいっさい自粛しないこと、なにより、自粛させないこと。その受け皿を地方自治体は早急に準備すること。総力戦体制だから「城内平和Burgfrieden」(第一次世界大戦時にドイツで唱えられたスローガン)でいきましょう、というのが、20世紀の歴史の常道だったが、異議申し立ての抑制こそが、かえって新型コロナウイルスによる被害を増大させるだろう。フランス大統領のエマニュエル・マクロンは3月16日のテレビ演説で「我々は戦争状態にある」と繰り返し、アメリカ大統領のドナルド・トランプもみずからを「戦時下の大統領」と呼んで憚らないが、この言葉は諸刃の剣である。緊急性を高めることのみならず、異論を弾圧することにも極めて効果的な言葉だからだ。第三に、戦争にせよ、五輪にせよ、万博にせよ、災害や感染などで簡単に中止や延期ができないイベントに国家が精魂を費やすことは、税金のみならず、時間の大きな損失となること。どのイベントも、その基本的な精神に立ち戻り、シンプルな運営に戻ること。とくに、日本のような災害多発列島はいつキャンセルしても対応可能な運営が望まれる。第四に、現在の経済のグローバル化の陰で戦争のような生活を送ってきた人たちにとって、新型肺炎の飛沫感染の危機がどのような意味を持つのか考えること。危機は、生活がいつも危機にある人びとにとっては日常である、というあたり前の事実を私たちは忘れがちである。いつ落ちてくるかわからない戦闘機に毎日さらされている基地周辺に住む人びとにとって、爆音で神経が参ってしまうリスクや事故に遭うリスクは、新型コロナウイルスに感染するリスクよりも低いだろうか。原発事故によって放射性物質にさらされ、いまだに避難中の人びとにとって、病気になるリスクは、新型コロナウイルスに感染するリスクよりも低いだろうか。上司の嫌がらせを受けながら働く人間にとって、過労死や自殺やうつ病になるリスクは、新型肺炎で死ぬリスクよりも低いだろうか。ホームレスが病気を患っている可能性は、新型コロナウイルスに感染する可能性よりも低いだろうか。派遣労働者として働いているシングルマザーにとって、体を崩して子どもに負担をかける怖さは、新型コロナウイルスの怖さよりも小さいだろうか。学校に馴染めない子どもたちが学校によって傷つくリスクは、この子たちに新型肺炎が発症するリスクよりも低いだろうか。権力を握る者たちは、毎日危機に人びとを晒してきたことを忘れているのだろうか。なにより、新型コロナウイルスが、こういった弱い立場に追いやられている人たちにこそ、甚大かつ長期的な影響を及ぼすという予測は、現代史を振り返っても十分にありうる。第五に、危機の時代に立場にあるにも関わらず、情報を抑制したり、情報を的確に伝えなかったりする人たちに異議申し立てをやめないこと。台湾の保健省大臣のように、体力的にも知能的にも、何時間でもどんな質疑が来ても誠実に応答できる人間だけが、政治を担うことができる。また、インターネット上の新聞記事は、個人の生命に関わる重要な記事にもかかわらず、有料が多い。情報の制限が一人の救えたかもしれない命を消すこともあるのだ。せめて新型コロナウイルスに関する記事だけでも無料で配信するのが、メディアの社会的責任である。」
***

 藤原辰史さんの文章にご興味のある方でウェブサイトを御覧になれない方には全文をお送りいたします。お申し越し下さい。

 御本尊に供えられた菓子や果物のお下がりを貧困家庭におすそ分けする「おてらおやつクラブ」にも協力しておりますので、御家庭で余っている食品(菓子・果物・米・海苔・醤油・油など)をお届け下されば有効に活用させていただきます。

 東北地方太平洋沖地震と大津波、東京電力福島第一原子力発電所の事故から8年8ヶ月経ちますが、未だ大震災後ではなく、大震災真只中の日本です。原子力発電は、たとえ発電所における事故がなくとも、ウラン採掘によりオーストラリアの先住民の居住地など鉱山周辺の大地を汚染し、発電所で働く作業員の方々に放射線による被曝を日常的に強い、膨大な時間に亘って廃棄できない放射能汚染物質を管理し続けなければならないという、人類を含め、地球上の生き物とは共存できない事業です。私は、福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電所の無かった日本に戻ることに明日への希望を見出したいと思います。

 サンガはサンスクリットで共同体を意味し、漢訳では僧伽(そうぎゃ)、略が僧です。従って僧は出家者個人を表す言葉ではなく、佛教を信じ、実践する人々の集いを意味しました。佛(真理に目覚めた人)、法(真理・教え)、僧の三宝を敬うことが佛教者の基本的な態度として定められておりますが僧を敬うとは仲間を大切にすることを意味します。800年前に法然上人(1133〜1212)は「どんな人間でも『南無阿弥陀佛』と唱えれば一切衆生を目覚めさせる阿弥陀佛の本願の力〔他力〕によって阿弥陀佛が建立した清らかな世界(浄土)である極楽に往生し、佛の力で悟らせていただけるから、『南無阿弥陀佛』と唱えられるだけ唱えて生きよ。」と教えられました。信心を定めて『南無阿弥陀佛』と唱えるのではなく『南無阿弥陀佛』と唱えていると信心が定まってゆくのです。法然上人の佛教では『南無阿弥陀佛』を唱えながら、この世で何を願い如何に生きてゆくのかは個々の意思に任されています。世界中で出口の無い戦い、痛ましい事件、日本では未曾有の震災が継続しておりますが、お釈迦さまが説かれた縁起(生かされて生きている)という真理を実感し、心に余裕のあるときには慈悲(衆生に対する分け隔ての無い大いなる慈しみと心を重ねる悲しみ)の精神に基づき、他人ではなく仲間とともに生きる社会であるという意識を持って、拘らず、返礼を求めず、生かされていることの感謝の表現として出来る時に、出来る対象に、出来る形で、布施〔法施(佛教を説く)・財施(金品を施す)・無財施(柔和な顔、身体を他者の為に使う等)・無畏施(安心を与える)〕などの菩薩行を実践することを理想としつつ、煩悩にまみれ、善悪ではなく損得ばかり考えて生きている自己中心的な己の現実を見つめながら法然院という場をお預かりし、信心の確立、学び、安らぎ、出会いの場として皆様と集い、少しでも心豊かに暮らせる社会となりますよう、法然上人の教えの現代的意義を説いてまいりたく存じます。社会的役割を担って生きることが現代における生きがいとなっておりますが、寺は参っていただく処ではなく、社会では肩書があり、家に帰られても家での役割に押し潰されそうな時に肩書や役割を外して帰って来ていただき、大慈悲に溢れる佛と向き合い、楽になっていただく処です。人間は意味を求める生き物です。自身の拘りによって作られた物語だけで生きようとすると良縁や悪縁に出合い、うまくいったりいかなかったりして迷いますが、念佛を唱え、生きとし生けるものは仲間であるという大きな物語を信じると、たとえ自分で作った物語に一喜一憂したとしてもそれを絶対化せず、有頂天になったり絶望することもなく生きてゆけるのではないでしょうか。

 心の潤いと糧の補給にお立ち寄り下さい、「阿弥陀さん、ただいま!」と。

                               合掌

                          法然院  梶田真章


 新型コロナウイルスの感染拡大の防止に留意しつつ、5月11日以降、下記の通り御参詣をお待ち申し上げております。なお今後の状況の変化により行事・催しを中止とさせていただくことがございますので実施の有無を直前にお問い合わせ下さい。


「第19回 悲願会」
悲願に生きる菩薩行の実践

 5月 3日(日・祝)〜 5日(火・祝) 

*** 延期いたします。実施日は未定です。***


「岡 潔 著・森田真生編
『数学する人生』(*)を読む」

第3回 

(*)新潮文庫

 5月 7日(木)

午後1時半〜3時45分

*** 6月 4日に延期いたします。***


「東北関東大震災 物故衆生 月忌 追悼法要」

 5月11日(月)

午前11時

参加 御志納

於 本堂

 地震発生から9年2ヶ月。追悼や復興への決意を何らかの形で表現されたい方はお集まり下さい。

 志納されたお金は「いわき放射能市民測定室たらちね」へ寄付いたします。


「石井公成著『東アジア仏教史』(*)を読む」
第8回

(*)岩波新書

 5月21日(木)

午後1時半〜3時45分

於 本坊

講師:梶田真章

参加料 御志納

(テキストをお持ちでない方は別に950円が必要です。)


「第278回 善気山念佛会(ぜんきさんねんぶつえ)」

 5月26日(火)

午後3時〜5時45分

参加料 御志納

於 本坊

プログラムの一部へのご参加も歓迎いたします。

第1部   午後3時 〜 3時半

      おつとめ       本堂でご一緒にお経と念佛を唱えます。

第2部   午後3時半〜4時半

      おはなし      「日本佛教史6 鎌倉時代(2)」 梶田真章

第3部   午後4時45分〜5時45分

      おんがく       出演:よし笛   呉山平煥
                    箏     福原左和子


「岡 潔 著・森田真生 編
『数学する人生』(*)を読む」
第3回 

(*)新潮文庫

 6月 4日(木)

午後1時半〜3時45分

参加料 御志納

於 本坊

 <四 数学と人生、結 新しい時代の読者に宛てて>を題材に語り合います。

 テキストをご購入の上、事前にお読み下さい。


「第62回 善気山 専修(せんじゅ)念佛塾」
『選択本願念佛集』を読む その2 

 6月 7日(日)

午後3時〜6時 

於 本坊

午後3時〜3時20分  念佛一会(いちえ) 本堂にて念佛を唱えます。

午後3時半〜6時    講話会       講師:梶田真章   
                      後半は対話によって深めます。

参加料 1000円(当日、お納め下さい。)

お申し込み:電話、E-mailにて法然院まで。

 テキスト『選択本願念仏集』(阿満利麿訳・解説)(角川ソフィア文庫)を購入される方は、別に700円が必要です。


特に記載のない限り、会場は法然院です。

ご予約は24時間、電話、FAX、E-mailにて承ります。

〒606-8422 京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町30番地 法然院 内
法然院サンガ

Tel. 090-1899-3689   Fax. 075-752-1083
E-mail:Byakurenja@aol.com
E-mail:byakurenja25@docomo.ne.jp
法然院のホームページ http://www.honen-in.jp/
法然院森のセンターのホームページ http://fieldsociety.la.coocan.jp/


郵便振替口座

口座記号番号:01050?4?60318

加入者名:本山獅子谷法然院(ほんざんししがたにほうねんいん)


ゆうちょ銀行 一〇九(イチゼロキュウ)店

当座預金 口座番号:0060318

名義:本山獅子谷法然院


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